令和6年度 審査結果・受賞作品

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住まいのインテリアコーディネーションコンテスト 作品全体講評

本年度の作品はコロナ後の日常での、人々の「暮らし」や「ライフスタイル」の多面化、多様化、細分化した住環境のニーズに合わせて、それぞれの作品が、独自のコンセプトや考え方に基づいて作られていると感じた。特に課題分野では、空間に住まう人の設定が一般化されずにそこにいる人の趣味や嗜好、考え方など、住まい空間に何を求めているかなど多様でかつ独特な世界観を構築しながら空間を物語るような作品が多かった。また、事例分野においても空間デザインに注力されている部分がクライアントの意思や生活スタイルを尊重した上で立地条件やリフォーム上の条件などとリンクしている。どのようなコンセプトを優先すべき空間なのかを取捨選択しながら、フォーカスポイントを明確化してデザインとして強弱をつけた作品が多く、デザインスタイルと生活スタイルの方向性が多様な考え方で成立していると感じる。非常に密度の高い作品が多くなってきており、これからの「暮らしのデザイン」とインテリア業界の可能性を感じることができた。

経済産業大臣賞

事例分野:リフォームコーディネーション部門
 
光土間の隠れ家 データを開く

光土間の隠れ家

北村 泰之
KNOOOT株式会社/大阪府

経済産業大臣賞 講評

旗竿敷地に建つ築86年の古民家の耐震改修に合わせて、リーズナブルな予算内で収められたリフォームコーディネーションである。住宅密集地であるために室内は暗くなりがちな環境であったが、耐震補強により可能となった広い開口や吹抜け空間から得られる採光を「光土間」と称する1階の土間を中心として集約している。土間には御影石が使用され、周りの天井には2階床のデッキプレート現しが採用されて、この光土間の周りに諸室や階段を配置している。光土間にはゴム集成材の側桁と鋼板の踏板で構成された階段が配置され、改修工事の新たな素材の質感や色が既存構造材の古木と上手くコーディネートされている。また真壁の内壁、畳と座卓など町屋風のインテリアコーディネーションが行なわれているが、長手方向の通風に配慮した空間構成や外断熱による温熱環境への配慮によって、モダンでありながら伝統を感じさせ、ナチュラルで快適な空間が実現されている。

製造産業局長賞

課題分野:A部門「趣味を生かした空間のインテリアコーディネーション」
東京家族 データを開く

東京家族

塚村 遼也
広島大学大学院/広島県

製造産業局長賞 講評

ご主人が既に他界されたお婆様が、その旦那さんとの思い出と共に生活できるようにとの計画で親想いの写真家の息子さんが依頼主となっている。課題分野での設定された空間構成の計画でありながら、詳細な住人の今までの人生や趣味嗜好や性格などをリサーチした上で旦那さんの趣味やその思い出、お婆様のご近所との交流が好きな生活スタイルや来客者の泊まれるエリアの設定、息子さんのアトリエ空間など、L型に構成された空間構成の中で、パブリックとプライベートとそしてその中間領域をうまく構成することによって、非常に具体的な生活スタイルの想定を空間構成に取り込んでいる。 「東京物語」というタイトルは「小津安二郎」の映画のようにこの場での生まれる日常の幸せそのものによって空間を構成し、それらが重層したり連続することで人の生活そのものであるインテリアの景を表している気がする。それらの詳細かつ独特の空気感の表現が作者の熱い想いを感じることができる作品となっている点が高く評価された。

インテリア産業協会会長賞

事例分野:新築コーディネーション部門
 
非日常を日常に データを開く

非日常を日常に

智原 彰子
株式会社ヤマダホームズ 小堀住研/大阪府

インテリア産業協会会長賞 講評

港を望む高台の敷地に建てられた新築住宅で、眼下に広がる眺望を最大限に取り込むことが建築設計において重視されている。またリビングやアウターリビング、ダイニングなどの部屋は、多くの来客があることを想定した開放感のある空間となっている。床材や壁材には特に夜景のパノラマの美しさを最大限に引き出すために、グレーを基調とする色調の大判タイルが採用されている。硬質の建材に対してインテリアエレメントでは、無彩色のカラースキームをソファやカーペットなどで準用しつつも柔らかみのある素材と形が採用され、くつろぎのある空間を演出している。またダウンライトや間接照明の使用によって、すっきりとした天井面は、視線を内から外へと導いている。一方でライトコートの植栽や諸室に配された植物は、シャープな印象を与える空間のアクセントとなり、潤いを感じさせるインテリアコーディネーションとなっている。

インテリア産業協会会長賞

課題分野:A部門「趣味を生かした空間のインテリアコーディネーション」
まちの庭を引き込む家 データを開く

まちの庭を引き込む家

阿部 りさ・阿部 ひかる
フリーランス・フリーランス/神奈川県

インテリア産業協会会長賞 講評

「敷地いっぱいの住居によりまちの中の余白が消え、窮屈に感じた。」という作者の思いは都会の昨今の現実だ。二つの箱の組み合わせの住宅で、小さな庭と大きな庭を作りだすことは作者の意図したことだ。その大きな庭は自然光が注ぎ、住み手の趣味を披露する舞台でもあり、小さな庭もまちに繋がり人が集い、新しい景色と新しいコミュニティーを生む。それぞれの住み手が個々にアトリエを持ち、クリエイテイブな仕事に向き合うことのできるスペースとシェアする生活空間の交わりの連鎖によって、フレッシュでユニークなアイデアが生まれ、膨らむであろうと想像する。風通しがよく開放的なスペースと住み手の個々を尊重した独自性のある空間の調和が心地よい。カーテンで柔らかく仕切られた水回り、バスルーム横から小さな庭に出ることができるのも魅力的。コロナ禍を経て仕事の仕方も変化し、自宅での仕事や余暇を過ごすことも増え、住居空間に対する考え方やあり様も変わりつつある今、他者を受け入れながら身近な自然、交わる人と共に生きる豊かで暖かな空間を求める人も増えているはずだ。作者がこだわる「余白」こそが、未来の可能性なのだろう。

部門最優秀賞

事例分野:新築コーディネーション部門
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HOUSEUM

鈴木 俊彦
SQOOL一級建築士事務所/兵庫県
 

講評
作品『HOUSEUM』は、その名の通り、まるで美術館のような家を目指した設計が高い次元で実現された邸宅となっています。外装と内装のカラーコーディネートは見事に統一されており、その統一感が全体の高級感を一層引き立てています。外観のデザインにおいては、ガレージも含めたデザインが奥行きを感じさせ、植栽もアクセントとして効果的に配置されており、非常に美しいファサードとなっています。間取りに関しては、一見オーソドックスな構成ながら、中庭と吹き抜けが効果的に配置され、内部と外部の空間を自然につないでいます。これにより、開放感と居住性を両立させた設計が実現されています。内部のデザインは、細部まで丁寧に設計され、まさに美術館のような洗練された空間が広がっています。素材の選定から照明の配置に至るまで、どの要素も緻密に計算され、美しく調和しています。邸宅設計はクライアントと設計者の緊密な信頼関係が成功の鍵となります。『HOUSEUM』はクライアントの要望を深く理解し、それを具体的な形にする過程で築かれた信頼関係が作品全体に表現されています。建物の完成度はもちろん設計者の姿勢が高く評価されました。

事例分野:リフォームコーディネーション部門
incorporation データを開く

incorporation

小田 真平・Randi Marie Jensen
小田真平建築設計事務所・フリーランス/大阪府
 

講評
新築マンションに日本の伝統的空間を内包させることをリフォームで実現した事例。障子を多用し、透過してくる光の向こう側の空間を感じさせている。緩やかな境界を特徴とする日本的空間づくりの発想である。そして、カラースキームは繊細な日本の伝統色でまとめられ、余白を残して最小限の家具が配置されて整った空間は、凛とした静の空気感がある。インバウンド需要が続き、外国人向けに和風スタイルのインテリアが求められることも多い昨今であるが、そのような表面的な日本風の演出とは一線を画す。リフォーム工事として大きな解体は行わず、廊下とLDKを仕切る建具の撤去だけにとどめており、異形状の間取りに合わせた造作は無理なく合理的である。玄関ドアから続く廊下の正面に作ったR壁はLDKへ繋がっていく「間」へと、人を招き入れるような視線の誘導に成功している。光と視線をコントロールするために巧みに使い分けた素材が和紙であり、また、提灯や行燈がモダンにデザインされた和紙の照明器具は空間のアクセントになっている。和紙の多様な表情も魅力的な事例である。

事例分野:インテリアスタイリング部門
SKY LIVING データを開く

SKY LIVING

髙島 里実
株式会社住宅資材センター/千葉県
 

講評
世の中の傾向として、庭と一体化したインテリア、外と中との境目のない暮らしを望む声が大きい。環境になるべく負荷をかけずに自然をふんだんに感じる暮らしへの憧憬である。本作品は見事にその要望を叶え、インテリアスタイリングによってデザインを極めた、穏やかで自然に抗うことのない見事な作品である。庭をリビングに取り込み、かつ空まで繋げる発想の潔さ。またお子様といえば黒は避けがちになるところだが、スタイリッシュなブラック&ホワイトで統一し、ナチュラルな構造体、低い家具でコーディネートを選択したことにこの作品の類まれなインテリアの力量を感じる。だからこそ、テラスのグリーンと日の光が眩しいほどに煌めくのであろう。グリーンの配置も非常に手馴れており、的確な場所にちょうど良い高さの植栽がコーディネートをさらに安定したものとした。ラナイテラスで過ごす非日常の憧れの空間を、日常の暮らしにさらりと取り込んでしまう、インテリアスタイリングの力を十分に発揮した作品である。

課題分野:A部門
「趣味を生かした空間のインテリアコーディネーション」
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Link

康本 恵英
フリーランス/神奈川県
 

講評
部門の課題テーマが「趣味を生かした空間」ということで、空想的なプランも多い中、非常に現実的且つ具体的な作品である。趣味が日常生活に密接に結びついているということをコンセプトに、趣味だけでなく家事動線なども含めた暮らしやすさを丁寧に検討したプランである点が評価に値する。クライアント設定に際立って特殊な条件はなく、多くの家族の参考となるプランである。趣味のための特別なスペースを大きく設ける考え方ではないため、日常生活の中で家族それぞれの趣味が無理なく共存できる。生活そのものを楽しむアイデアが多く盛り込まれた作品。玄関横の「アウトドアリビング」とインナーバルコニーの「アウトドアダイニング」、また課題の与条件である2つの立体の外に設けた「ペットと遊べるテラス」など、屋外との繋がりも多く感じられ、豊かな時間がイメージできる。こなれた手描きのスケッチは好感度が高く、内装材のカラースキームとリンクする優しいタッチでこのプランの先にある穏やかな時間も表現できている。

課題分野:B部門
「人がゆるやかにつながれる空間のインテリアコーディネーション」
距離感調整エレメンツ データを開く

距離感調整エレメンツ

小早川 瑛子
京都工芸繊維大学大学院/京都府
 

講評
審査時に飛びぬけた鋭い感性を感じたが、改めて熟読させて頂き、その深い洞察力と表現力に感服する。プレゼンの構成も言葉の表現の選択も見事である。まずはタイトルの「距離感調整エレメンツ」何々? と引き込まれ、丸い人々の穏やかなるパース。その後00,01,02,03とぐいぐい展開する物語。もちろん古民家を再生する過程も秀逸である。「緑と光と他者」というキーワードが全体計画の根本に流れ、プラン自身も無理がない。もう一つ、段差による目線の違いが心に大きく影響することも配慮済み。既存の建具を再利用することも忘れない。古民家再生そのものがサスティナブルであるが、庭の有効な活用、建具のよき場所への再利用、まさにエシカルな作品といえる。特にこの作品の優れたところは、人との関わりの重要性を見据えている点にある。一人は好きだがずっと一人は嫌、干渉されるのは嫌だけど、噂話もしたいわ、などと我儘? ともとれる人間のサガまで包み込んで微調整してくれる。建築インテリアデザインの力は無限大だ。言霊の溢れる見事な作品である。

部門優秀賞

事例分野:新築コーディネーション部門
胡舞の家 データを開く

胡舞の家

辻 和永
株式会社K-ATELIER/北海道

事例分野:リフォームコーディネーション部門
時をためる データを開く

時をためる

土田 菜緒
フリーランス/愛知県

事例分野:インテリアスタイリング部門
響穏の家 データを開く

響穏の家

有住 和華
株式会社ホリエ シエルホームデザイン/宮城県

課題分野:A部門
「趣味を生かした空間のインテリアコーディネーション」
FLAVOR BOX データを開く

FLAVOR BOX

三宅 史緒里
スペースデザインカレッジ 東京校/東京都

課題分野:B部門
「人がゆるやかにつながれる空間のインテリアコーディネーション」
集光住宅 データを開く

集光住宅

三浦 純乃
スペースデザインカレッジ 東京校/埼玉県

特別審査員賞

事例分野:インテリアスタイリング部門
 
 
PET resin veil データを開く

PET resin veil

長谷川 聡
安田女子大学 長谷川研究室/広島県

課題分野:A部門
「趣味を生かした空間のインテリアコーディネーション」
いい湯なお家 ~まるで銭湯~ データを開く

いい湯なお家 ~まるで銭湯~

森尾 舞
スペースデザインカレッジ 京都校/京都府

課題分野:B部門
「人がゆるやかにつながれる空間のインテリアコーディネーション」
糸が繋ぐ データを開く

糸が繋ぐ

本田 ちえり
スペースデザインカレッジ 東京校/神奈川県

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